avril 04, 2007

少子化

日本の少子化は深刻化する一方であるが日本を離れて活動していると国際競争力は優れた「人」に支えられているということを痛感する。少子化によって人材自 体の母数が減少することもさることながら、核家族化がさらに進行することで、通常は兄弟の仲で自然に培われる競争や共存、サバイバルのノウハウを経験する 機会が日本の子供たちからなくなり、結果として人間自体がメンタルに弱体化することは今後の日本の社会に致命傷になるのではないかと本気で思う。

やらなくてはならないことは多くあるけど、少子化対策こそが地域レベル、国レベルの第一優先課題として本気で取り組まなくてはならないのではないかと思う。

以降は勝手な一人語に過ぎませんが、こちらに生活してきて感じてきたこと、日本でも実践できるのではないかと思うことです。

ヨーロッパは全般的には日本ほど深刻ではありませんが少子化の方向にあり、各国対策に苦心しています。特にイタリア、ドイツは深刻で す。その中で、フランスは最近特殊出生率が2.0を超え、見事なU字復活を果たしました。一部の意見ではアフリカからの移民が子供を沢山生むのでそれが数 値を上げている、としているようですが、実際はそのようなことはなく、「全般的に子沢山」です。もっとも、フランスの失業率は最近減少しつつも10%を超 えている状況で、子沢山を手放しに喜べない状況があるのですが、この問題はここでは触れません。

フランスは社会保障が充実していることで有名です。子育てについても日本と比較してかなり優位な点があります。例えば家族手当は子供 が20歳になるまで支給されます。その額も日本の2~5倍です。このような手厚い経済的支援はもちろん機能しているわけですが、もっと身近で親身のある環 境が行き届いていることこそが要、というのが私の実感です。

(安心な公園、親も楽しいぞ)
まずは、公園です。パリにはバンセーヌの森といったような巨大で緑の多い公園も沢山ありますが、たいていは家のすぐ近くに小規模ですが、子供の遊 ぶ遊具とそれを囲むベンチ、ベンチに適度な木陰を作る植木、簡単なピクニックが出来る芝のある公園があります。夕方になると学校や幼稚園を終えた子供たち がそこに遊びに来ます。親はベンチに座って読書をしたり友人と話をしたり。遊具の下はクッションになっていますので多少のことでは怪我がしにくい構造で す。

親は注意を払っていますが子供にほとんど干渉せず、こどもは自分の持ってきたおもちゃを取ったり取られたり、譲ってあげたり、貸してもらったりと コミュニケーションします。子供は自然に子供の世界を作っているようです。親からの適切な距離が物理的にもうまく設計されています。

もうひとつ面白いのは、公園に必ず管理人がいることです。管理人は中学生が幼児用の遊具で遊んでいるのをしかったり、浮浪者を追い出したり、犬の 糞を片付けたり、ゴミを掃除したり、とかなり重要な仕事をしています。公園には柵が設けられており、夜にはしまります。また犬は基本的には入ることが出来 ません。場所によっては砂場に付けられている日よけの「傘」がそのまま夜は砂場の「蓋」になります。こうすることで砂の衛生が保たれるのです。

私が住んでいる松戸の公園は残念ながらこうではありません。数少ないベンチは浮浪者の宴会場と化し、柵はあるが野良犬が入る込むので あちこちに糞があります。砂場など、いつ砂を取り替えたのか分からないので、とてもではありませんが子供を遊ばせる気にはなりません。ベンチの位置も工夫 がなく(ときにはベンチもない)、コミュニケーションの場という思想が欠落しているようです。

(ヌヌさん)
ヌヌさんとは、ベビーシッターのことです。ベビーシッターは市に登録をして正式な資格をもらいます。ベビーシッターは低所得者の仕事になっているという側面もありますが、安価で利用でき、また一部は市から還元があります。

ベビーシッターと親との関係はかなりの信頼関係により成り立っています。家の鍵を預けるわけですし、子供が病気のときはその面倒もお願いするわけ ですから。アメリカではベビーシッターは学生のアルバイトが多いと聞いたことがありますが、フランスは違うようです。市が認定することで信頼性を高めてい ます。

(家族の支援、爺さん婆さん大活躍)
家族の支援が厚いことは、すべての基盤となっています。おばあさん、お爺さん、親類の子育てへの関わりが非常に多く見られます。例えば、
・夫婦でコンサートや夕食に行くので見てもらう。
・バカンスに行くので1ヶ月実家に預ける。
・子供が病気だが仕事があるので親に来てもらう。
などは日常的で、どこの仏家族でもやっているようです。

別の見方をすれば、自分の親や親戚を使って親は自分たちの時間をうまく作っているのです。また子育ての仕事を分担してもらっています。傍から見て いると、「子供をポイッと預けて、親は遊びに行ってしまった」と感じるのですが、子育てにおけるこのような気軽な信頼関係は、本当にいいものだと思いま す。

個人的な経験から、日本では、自分たちの楽しみのために数日も親に子供を預るというのは、モラル的に出来ません。無責任、放任、と思われるのが落 ちでしょう。でも、本当は自らの親こそが、自分たちの楽しみのために子供を頼む第一の相手になるべきだろうと思います。少子化対策で幼稚や保育園を増設す ることが議論となっており、それは大事なことだと思いますが、本当に大切なのは身内の協力であろうと思います。親がハッピー=子供もハッピー、こういう環 境を身内から作っていく必要があります。こういう考え方になじめない人も多いかもしれませんが。子育ては親だけの問題ではありません。

仏の友人に話を聞くと、こういった親の協力があることが子供の環境にもよい、と考えて地元に仕事を探す人もいます。家族の絆こそ地元の魅力でしょう。そういう観点から地域と子育てを見直していくことが日本でも必要ではないかと思います。

それがひいては国際的にも強い国づくりにつながるのだと思います。

蛇足ですが、もうひとつ加えます。

(お父さんの帰りが早い)
フランスの統計によると「相変わらず子育て仕事は母親に偏っている。10年前から比較して男性が家事に費やしている時間は2分しか変わっていな い」として、不満が多いのですが、父親が子育てに多く関わっていると思います。こちらは学校の送り迎えは親の義務ですが、このための遅刻をすることは許容 されているようです。また、仕事の帰りに同僚と一杯ということはほとんどなく、さっさと家に帰ります。というか、帰らないお父さんは離婚のようです。

いろいろありますが、行政がやる前に出来ることは多くあるし、また、お金をかけなくても少しの工夫で出来ることは多いと思います。