novembre 18, 2006

数学者広中平祐講演会(Paris)




今日は数学者広中平祐氏の講演会が日本文化センターであった。 広中平祐さんは数学のノーベル賞にあたるフィールズ章を受けた日本人数学者として著名な方らしい。例によって、無学の私は興味本位に公演に出かけた。

「数理の翼」という会がある。これは夏休みの時期に数学や物理の得意な学生を集めた合宿で、すごくレベルが高い。高専時代に私の中のよかった友達がそれに応募し、参加したことがあるが、かなりの刺激を受けていた。

参加するのは容易ではない。当時は学校で一人だけ推薦してもらえた。その一人に選ばれるのも大変だし、選ばれたからといって、数理の翼の方でさらに選定があるので、敷居が高い。私も応募してみたが、当然落選した。

いい話を沢山聞けたので、メモとしてここに残す。

数学とは何か。目に見えなくて大切なものを捜し求めることだ。Les mathematique sont la matrice de la science et de la technologie.

氏は15人兄弟のうちの真ん中あたりに生まれたということだ。
「教育は捨石」可能性があれば置いていくが、守ろうとするとひどい目にあう。

20代の時にアメリカに留学し、その後にフランスのIHES(数学研究所)に客員研究員として招聘されている。ナノでフランス語も堪能である。氏の憧れだったフランスの数学者は
Jean Leray
André Weil
Jean Dieudonné
Laurent Schwaltz
Henri Carton
Jean-Pierre Serre

留学で学ぶことは沢山あったが、特に自分のあこがれた先生の周りに集まる同世代の若者、そして海外で出会う日本人との交流に学ぶことが多かった、という。これについては全く同感である。人間関係は「相手に関心を持つこと」だ、というがその通りだと思った。

さて、話はフランスの数学研究所IHESに移る。氏にとってのかけがいのない場所だ。ここで学んだことは次の二つ。
・小さく生んで大きく育てる
・人ありき
数学研究所は4人で始まった。当然図書館や資料室などはない。だからパリに作った。図書館は市の(国の)図書館だ。設立の経緯もあるドイツからフランスへのGrothendickという亡命者の才能を見抜いたこと、厳しい時代で人を第一に置いたことが重要だったという。
一方、日本を振り返ると、例えば大学や研究所の設立ということになると文部省は教員の数、施設などを第一の問題とする。「組織ありき」となっているのである。問題は、発展している間はいいが、縮むときは大変だ、ということである。極力小さく、成長を楽しむくらいが調度いい。

数学者のミッションとして分かりやすい説明があった。
①無限大の有限化
世の中はわからないことばかりで無限大に見えるのだけど、近似的でも分解でもいい、それを少しでも分かるように、つまり有限にして説明すること。
②極難極易の表裏一体
数学は難しいから意味がある。でも難しいが一度分かれば紐が解けるように簡単なのだ。これは現在の情報化社会で必要なツールになりつつある。つまり、情報が氾濫するので、それを守るために鍵が必要。鍵は悪用する人にとっては仮に手に入れたとしても非常に使いにくいもので、本人にとってみれば簡単に使えるものであることが理想。これを実現するのは数学である。
③仕立屋理論学の発展
実は数学者は実用的なことにとても興味がある。
④抽象化と具象化の推進
数学は時として抽象的なのであるが、その答えは方程式でありとても具象的
⑤普遍構造の建設と啓蒙

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